スプリント療法

スプリント

歯を動かす治療に入る前に、診断の一つのステップとして咬合の状態、下顎の位置、顎関節の状態をチェックするためスプリント療法を行なうことがあります。程度の差はありますが、ほとんどの患者は顎関節をずらして上下の歯を咬み合わせています。この顎関節の状態を出来るだけ良い状態(安定)にした時、下顎はどれ程ずれているのか、スプリント療法によって理解できます。矯正治療は咬合を変化させる治療です。円板がずれていたり顎関節に問題があるとき、歯を動かす前にスプリントにより咬合の変化を与えてみて反応をみる役目もあります。

小児でもすでに顎関節のずれが大きく、また骨の吸収変化が起きている場合もあります。関節円板のずれも矯正前の患者では非常に多く見られます。この場合、すぐに矯正治療で歯を動かすことは顎関節の状態を悪化させる可能性があります。まずは咬合を変化させても大丈夫か確認する必要があるわけです。

スタビライゼーションスプリント(以下スプリント)は40年程前よりアメリカ、カリフォルニアを中心に用いられてきたもので、下顎と咬み合う面に機能面が咬合器を用いて作製され、この機能面が患者の下顎との関係を保つよう、定期的に調整します。またCPIを用いて関節窩での下顎頭の位置の変化を調べます。このような一連の治療をスプリント療法と呼び、私たちのグループは非常に重視しています。

スプリント治療前

治療前

49才白人男性です。下顎頭の先端部分が大きく吸収され、一方の関節窩の部分も吸収を起こしています。関節に疼痛があり、激しい頭痛も伴っていました。

スプリント治療後

治療後

8ヶ月間のスプリント治療により、下顎頭の形態が改善(Positive remodeling)しています。それに伴ない関節の痛み、雑音の症状も消退しました。治療はスプリントのみで薬剤は用いていません。頭痛も全くなくなりました。