治療ゴールの設定
矯正治療は前に述べました4つのエリア(顎関節、顔の美しさ、機能的な歯並び、歯周組織)に影響を及ぼします。歯を動かすということはその影響を考慮し、その上で歯を動かすことになります。歯だけ動かしてこれらのエリアに全く影響を及ぼさないことは不可能です。反対に歯を動かすことは影響を及ぼす力をもっていることになります。この可能性を用いれば、前述した様な4つのエリアにおける目標を達成することで患者個人の最も良い状態を引き出すことが可能となります。
診断をそのゴールのもとに行なう
「顔の美しさ」の目標
それでは、「顔の美しさ」のエリアについてみてみましょう。
治療前の顔
口元が強く前突していますが、治療計画をたてる時、顔への影響を考慮して歯の動き、すなわち、歯の移動目標-VTO(Visual Treatment Objective)を考えます。
治療計画
VTOを基にコンピューターが描いた画像です。
実際の治療結果
VTOで計画された動きを行なった実際の治療結果です。
治療結果を予測することができるようになると、ゴールに達するため、どのように歯を動かしたらよいか、その可能性と限界をあらかじめ治療開始前に理解し、さらに顔貌に対する影響も同時に確認できます。もし顔貌に対する影響が望ましくなければ、他のプランに変更することも考えられ、患者に選択肢を提示できます。
顎関節の目標
もう1つのエリア、顎関節を例にあげてみましょう。
sample Aは機能的に優れた顎関節(目標)です。患者が咬み合わせの問題を訴えて来院した場合、顎関節の状態をチェックします。
CT画像を見ますとsample Bの状態でした。sample Aと比較すると、下顎頭の位置の異常が良くわかります。
sample Cは矯正治療前にスプリント療法を行ない、顎関節の機能を向上させた状態を示しています。下顎頭の位置はsample Aに近くなっていることがCT画像で確認されました。このような顎関節の状態で歯を口の中で並べていくのが重要です。
正常な顎関節の例
機能的に優れた顎関節(目標)です。
スプリント療法前
下顎頭が関節窩から大きくずれています。
スプリント療法後
下顎頭は正常に近い位置で安定しました。