ロス先生について

シカゴにあるロヨラ大学歯学部矯正学科のジャラバック先生のもと矯正医としての指導を受けました。彼のアシスタントをしているとき、ロス先生はある学会でご自身の症例を展示したところ、非常に高い評価を受けたのですが、ロス先生自身は治療後の患者の顔の表情が治療前と比べ悪くなっているのが気になっていました。ベテランの先生方がほめて下さることにかえって違和感を感じたそうです。歯の並びも当時としては規格通りできていましたが、機能的かというと今思えば程遠いものでした。何かがおかしい。100年の長い歴史を誇る固定式装置を用いる矯正学の一大転換がはじまったのです。

矯正治療を行なうからには治療後に機能的にも改善され、顔貌も良くなってほしい。しかも美しい歯列が達成され、治療直後がベストではなく、その結果が長く維持され安定した結果であってほしい。ロス先生はこれらを目標に、ロスフィロソフィーというそれまでのようなテクニックの変化ではなく矯正治療の根本を変革する歩みを始めた人であり、形態中心であった矯正学に顎機能という必要な要素を取り入れた、ただ一人の優れた臨床家でした。彼の前にロス先生はなく、その後にもロス先生は出てきていません。

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